突然立っていられないほどの激しいめまいが起こるのが「前庭神経炎」の特徴です。めまいで緊急入院する人の約6割を占めます。耳鳴りや難聴は伴いませんが、ほとんどの人に強い吐き気がみられます。
大きな発作は一度ですが、グルグルとした回転性のめまいが2~3日ほど続きます。その間は食事をとることや起き上がることが困難になります。1週間ほどで通常の生活に戻れますが、軽いめまい感が2~3か月、ふわふわとした浮動感はさらに長い間残ることもあります。
前庭神経炎の原因
耳の内耳には、「音を聞く」働きをする蝸牛(かぎゅう)と「体の平衡を保つ」働きをする前庭があります。前庭が受け止めた情報「どんな姿勢をとっているか、どのように体が動いているか」を前庭神経が脳に伝えることで、体全体のバランスが整えられています。この前庭神経炎では、脳に情報が正しく伝わらないために平衡感覚に異常をきたし、めまいや嘔吐などの症状があらわれます。
前庭神経になぜ炎症が起こるのかは現在のところ不明です。しかし、めまいが起きる数日前、あるいは起きた時に、上気道感染、いわゆるのど風を引いている人が少なくないことから、ウイルス感染を原因とする説が有力になっています。
前庭神経炎の治療方法
発作後1~2週間の強いめまいや嘔吐のある急性期は、できるだけ安静を保ちます。めまいを抑えるための薬や吐き気止めの薬を点滴したり、不安が強い場合位は抗不安薬を処方してもらいます。また炎症を抑えるステロイド薬を使用する場合もあります。
発作後2~数か月のまま遺憾の持続する慢性期は、症状に合わせていくつかの薬を併用します。
前庭神経炎が治っても、しばらくはフラフラめまいが残ることがあります。炎症の起こった前庭神経の機能そのものは完全に回復しないことが多いと考えられています。しかし、人の体には損なわれた機能を他の部分が補う「代償機能」が備わっています。この場合、平衡機能を脳が補うことで、めまいなどの症状は改善します。そのためには、めまいが軽くなったら積極的に体を動かして脳を訓練する必要があります。
平衡機能訓練を積極的に行うことが大切です。頭を前後に動かしたり、左右に動かす、回転させるなど自宅で簡単にできる運動です。効果が出るまでは、3か月ほどかかりますが、訓練をやめてしまうとまた元に戻ってしまうので、気長に続けることが大切です。
写真出典:photoAC
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