(イラスト:いらすとや)
イヌ回虫症とは寄生虫が体内に入り、いろいろな症状を表すことを言います。
イヌ回虫は生後3か月までの子犬の小腸に寄生しています。
この虫の幼虫が、肝臓や肺・筋肉や眼の中に入り込んで起こる病気をイヌ回虫症といいます。
子犬の糞といっしょに外に出たイヌ回虫の卵は、適当な環境で数週間経つと感染することが可能となります。
ただ、子犬以外の動物がこの卵を飲み込んでも、その中では成熟できないでいます。
その代わりに、筋肉の中などに留まってその筋肉を他の動物が食べると、その中でまた幼虫のままとどまってということを繰り返していきます。
大人になったイヌの中ではイヌ回虫は成熟できないでいます。
ではなぜ、子犬は回虫に感染しているのでしょうか?
それは、幼虫を持っている親が妊娠すると、一斉に虫が胎児に移動し始めます。
そして生後まもなく虫が腸管に降りてきて成熟するのです。
一番注意しなければならないのは、人はこの回虫に感染します。
幼虫が寄生している鶏の肉を食べて寄生してしまったりします。
<自覚症状はどんな感じ?>
自覚症状がまったくないのもあるのですが、虫が肺を通るときに咳き込む場合があります。
また発熱や胸痛などの症状がでるときもあります。
時にはアレルギー反応がでて、赤い発疹がでるときもあります。
健康診断のときには、超音波検査などで肝臓にたくさんの影がみつかることもあります。
幼虫が眼に入っていくと、視力の低下や痛みが発生したり、目の前を目の動きに合わせてゴミが飛ぶようなものが見えたりします。
<検査と治療方法は?>
だいたいは血液検査でわかることが多いようです。
肺や肝臓の症状からすぐにイヌ回虫症を疑うということはありません。
血液検査で、好酸球という白血球が増えているのに気づき、抗体検査で診断していきます。
このとき、本人に自覚症状がなくてもX線検査をしたり、腹部超音波でチェックを入れます。
(イラスト:いらすとや)
眼に症状がある場合は、好酸球はたかくありません。
また、抗体もあまり作られないため、眼科的に診断をします。
治療方法としては、駆虫薬であるアルベンザドールを服用します。
ただ、この薬は胎児に影響するために、妊婦や妊娠の可能性のある人には使用しません。
肺の症状や肝臓の影などはこの薬で比較的早くに消えますが、好酸球の値はなかなか下がることはありません。
虫が網膜内に存在していて、出血などの症状があれば眼科で光凝固療法などを行っていきます。
この寄生虫は、日本では牛や鶏の肝刺しなどで感染したと考えられるケースが大変多いものです。
同じものを食べている人は感染しているケースが大きいですので、一度検査を受けられた方がいいでしょう。
同居の家族も一緒に血液検査をした方が良いと思われます。