3.なぜ事件・事故は起こるのか
過去にはショッキングな事件も起きていますが、これらを「国民性」とか「文化の違い」で片づけてしまうことは出来ないと思います。これらの事件以外にも表沙汰にはなりませんが、ケンカによる傷害事件は多く存在しますし、他の外国人犯罪グループによる万引き行為や売春行為のあっせんなどの誘いにのってしまうこともあります。
なぜ、真面目な技能実習生を選抜してきたはずなのにこのようなことになってしまうのでしょう。
ひとつには採用時の失敗が関係しています。人事担当者の間でよく言われている言葉に「採用の失敗は教育では取り戻せない」というのがありますが、技能実習生の場合も「採用面接」の重要性は言うまでもありません。
この部分を監理団体に丸投げしていたり、現地送り出し機関の言うがままになっていたとしたら、厳しいようですが貴社の責任と言わざるを得ません。採用は外国人技能実習生制度を利用するうえで、要となります。
もう一つは、これらのトラブルや犯罪を起こしてしまう実習生の胸の内です。実習生たちは家族を故郷に残して、単身来日してきます。労働環境になれるだけでも大変なのに、慣れない生活環境での共同生活をしています。放っておいたらホームシックにかかってしまい、メンタルがやられてしまってもおかしくありません。そこまでいかなくても、彼らは祖国を離れて寂しい思いをしているのです。そんな気持ちが爆発してしまう、上司の何気ない叱責だったり、悪い友人からの犯罪の誘いだったりするかもしれません。
この「寂しい思い」が数々の事件・事故の背景にはきっとあったことでしょう。
そして見逃せないのが、受入企業側の違反の構造です。
上記は2016年8月16日厚生労働省発表の資料です。
上記は2016年8月時点での有効求人倍率のグラフです。
上記の2つのグラフには相関性があるように見て取れます。
有効求人倍率の上昇と共に「違反事業者数」が増えています。
技能実習生の数はコンスタントに増えていますから、仮説では「求人難」が「外国人技能実習生」への過度な負担を強いているように見受けられます。
これは2つの見方があって、一つは「制度事業をよく理解していない企業」が求人難から安易にもしくは問題点を把握しながら故意に外国人技能実習制度を使って外国人を雇用したという見方。つまり外国人を安価な労働力としてとにかく安く使いたいという需要から生まれたもの。
もう一つは、人材難から実習生の生活面までケアできる体制が維持できなくなって、寂しさや外部からの悪い誘いにのって実習生が犯罪に加担するというもの。つまり、受け入れ態勢が人材難から不十分になってしまったもの。
これらの考察から言えることは、
- 外国人労働者は増え続ける
- 人材難は解消される方向にない
- 人材難は制度事業の確信犯的違反業者の参入や実習生の生活管理面のサポートが薄くなる
- 搾取される、または放置される実習生たちがSNS等を通じて外部からの誘いにのり、犯罪に加担もしくは巻き込まれてしまう。
搾取されるケースは新たに法律で厳しい罰則が強化されることで減少は予測できます。しかし、問題は実習生たちの心のケアを社内の生活指導員任せにしてしまうことにあるように見えます。外国人に限らず、すべての従業員は温かい職場環境が必要です。
この職場環境の悪化が本来の原因と言えるかもしれません。
次のページでは、予防するためにできることを考えてみましょう。