(イラスト:いらすとや)
子供が生まれると、いろいろな予防接種をしていきます。
風疹麻疹もその一つになります。
今回のテーマには麻疹が関係してきます。
人は麻疹ウィルスには、2歳以下くらいの小児期に予防接種などで感染させ、抗体をつけます。
そして自然に回復するようになります。
ただ、麻疹ウィルス感染後に平均7年の潜伏期間で発症する脳炎を亜急性硬化性全脳炎といいます。
<ではその原因は何なの?>
原因としては、脳内で変異した麻疹ウィルスが原因とされています。
この変異した麻疹ウィルスが亜急性硬化性全脳炎ウィルスと呼ばれています。
ただこれは麻疹ウィルスとは別のもので、区別されています。
今わかっていることは、このウィルスを構成しているタンパク質に遺伝子変異がみられており、ウィルス粒子の形成や放出するのに欠陥があるということです。
<症状はどういうものが出るの?>
まず、初期の症状は行動の変化と学力の低下、性格の変化、意欲の低下で、だいたい平均して2か月か4か月で、けいれんのような不随意運動が見られるようになります。
それからさらに6か月から1年くらいで昏睡状態になります。
このように月単位で変化をしていきます。
それを考えると、変化が速いとも言えます。
しかし中には慢性に変化することもあります。
<検査と治療はどうなるの?>
まずは、血清または髄液で麻疹抗体価の上昇を証明していきます。
それから髄液の中の蛋白が増えます。
痙攣のような不随意運動を「ミオクローヌス」といいますが、これが現れるところには脳波で周期性同期生放電が見られます。
そして周期的なふり幅が大きな穏やかな脳波である「周期性高振幅徐波」が特徴となります。
これから進行すると、ミオクローヌスの減少といっしょに脳波はふり幅が低く、徐波となります。
CTやMRIにかけても、特徴的な変化はありません。
しかし皮質下や脳室の周りの白質に経度の病変がみられたり、これが進行するとだんだんと脳が委縮していきます。
診断としては、進行性の経過で前に書いた症状が見られ、検査等で髄液蛋白上昇・脳波で周期性同期生放電を確認していきます。
治療方法としては、残念なことに確実な治療法はありません。
ただ、ワクチン接種をして麻疹にかからないようにするしか方法はありません。
近年では様々な治療法が試みられており、抗ウィルス薬やインターフェロンなどの投与で5年以上の生存が確認されています。
または、C型肝炎の治療薬であるリバリロンの有効性が検討されています。
もし、この病気ではないかと思われた場合は、小児科か神経内科などの神経専門医に相談してください。