外国人労働者と働く

日本と中国の相違にびっくりした体験

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私がある会社で契約社員として働いていたとき「コウさん」という中国人男性が夏期の短期アルバイトとして入ってきました。髪の毛はやや後退し、恰幅のよいルックスはアルバイトというよりは中年管理職を思わせる立派な風格がにじみ出ています。年齢を聞けば驚いたことに私と同じで当時まだ30歳でした。_x000D_
私はなんと彼の教育係に任命され、初日からマンツーマンで軽作業の仕事を教えることになってしまいました。外国人労働者と働くのは初めての経験でかなりの緊張です。_x000D_
私はできる限り分かりやすい言葉で慎重に仕事のノウハウを教えます。コウさんは真面目な人で驚くほどに日本語も達者でした。仕事覚えもよく、今まで外国人労働者に対してある種の偏った見方をしていた自分を反省しなければと思いました。私が同い年であるという親近感もあってか日が経つにつれ仕事の合間などにコウさんは自身のプライベートについてポツポツと話しだすようになりました。_x000D_
吉林省の生まれだというコウさんは中国の大学を出て医師になったものの収入がさほど得られなかったそうです。そこで日本の一流企業に勤めたいと思うようになり、今は日本の大学に入るための勉強をしていることを熱っぽく語ってくれました。「医師を辞めるなんて勿体ないですね、素晴らしい職業なのに」と私が返すと、コウさんは分かってないなとでもいうように首を横に振りました。中国では医者の地位は高くない、政治家や会社の経営者のような高所得者のほうが地位が高く尊敬されると淡々と言うのです。これにはびっくりでした。日本では医者といえば政治家、弁護士に匹敵する地位の高い職業、先生と呼ばれ敬われる名誉ある職業というイメージがあるからです。中国と日本の職業に対する意識の違いを見たような気がしました。_x000D_
2週間ほど経ちコウさんはすっかり仕事にも慣れたようでした。休憩時に私が漫画を読んでいるとコウさんがやってきて「私も漫画やアニメが好きです。この間桜田花道の通っていた電車を見に行ったんです」とニコニコしていました。_x000D_
桜田花道はスラムダンクの主人公、コウさんが見に行ったのはスラムダンクの舞台となった湘南の江ノ電だったようです。私たちの世代にとって青春のバイブル的なスラムダンクが中国でも熱狂的な人気だったのも初めて知る事実でこれもまたびっくりでした。_x000D_
9月になり短期アルバイト終了の日が来ました。別れの挨拶で私はいつか中国に行ってみたいとコウさんに話しかけました。_x000D_
コウさんは嬉しそうに「私の育った吉林省はよいところなので、ぜひ行ってみてください。それから延吉市にも行ってみるとよいですよ。美味い名物があります」と言います。_x000D_
「本場の中華料理ですか、いいですね」 _x000D_
興味津々な私にコウさんはこう告げました。_x000D_
「ポシンタンといいます。犬肉の鍋です、私の大好物」_x000D_
私はしばらくその場に固まってしまいました。中国に犬食の文化をあることをその時初めて知ったのでした。去っていくコウさんの後ろ姿に何故か犬の姿が重なりました。それがコウさんと別れであり、私が外国人労働者にびっくりした最後の出来事でした。

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