PTSDとはトラウマによる病気です。研究が本格的に進んだのは1970年代で、アメリカにおけるベトナム戦争帰還兵や性的暴力を受けた女性の精神的後遺症などが大きな社会問題になったためです。PTSDはひとつの病気として認められてからまだ歴史が浅いということもあり、「甘えている」など誤解されることも多いのが実情です。
PTSDのきっかけは
PTSDの正式名称は「心的外傷後ストレス障害」です。これは命にかかわるような危険、たとえば戦争や災害、事件に巻き込まれるなどの体験や目撃したことによるストレスがトラウマになって、生活に支障が出るほどの特徴的な症状が続くことです。
トラウマというのは心の傷のことで、人間の対処能力をこえるような出来事を体験することで、心は強い衝撃にさらされて大きく変化します。この衝撃は、単に心理的な影響を残すだけではありません。脳に「外傷」を残すことが研究で明らかになっています。
ただしトラウマ体験によってすべての人がPTSDを発症するとは限りません。発症にかかわる因子があったり、ストレスに対する耐性や発症を抑える力の有無も関係してきます。
PTSDの症状とは
PTSDには特徴的な症状が3つあります。「再体験症状」「回避・マヒ症状」「覚醒亢進症状」があらわれます。
再体験症状とは、トラウマになった出来事の不快で苦痛だった記憶がフラッシュバックや夢といった形で繰り返しよみがえることです。とくにひどいのは「解離性フラッシュ」といわれるもので、その出来事を今現在体験している状態になるものです。意識が現実から離れてしまい、話しかけても反応しないこともあります。
回避・マヒ症状とは、トラウマ体験に関する場所や行動、会話や感情などを避けます。さらに体験そのものを思い出すことができなくなります。苦痛を避けようとするため、活動範囲がせばまったり、感情もマヒしたようになります。
覚醒亢進症状とは、精神的な緊張が高まり、常にピリピリしているような状態です。よく眠れなかったり、集中できない、ちょっとした物音にも過敏になるなどの症状が出ます。
これらの症状が1か月以上続き、生活に支障が出るとPTSDと診断されます。
PTSDとパニック障害との関係
PTSDもパニック障害も不安障害のある病気です。この2つの病気はどう違うのでしょう。どちらも不安や恐怖がベースにあるので深い関係があります。パニック発作は、両方で起こりますがパニック障害の場合は状況にかかわらず起こり、PTSDはトラウマ体験と重なります。PTSDはトラウマ体験で発症しますが、パニック障害は発作自体がトラウマになります。そのため、PTSDの場合はパニック発作があってもパニック障害を併発することはありません。一方、パニック障害の人は発作の経験がトラウマとなってPTSDに進んでしまうケースが多くあります。
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