病気やけがの影響で後遺症が残った、または後遺症が残る可能性が高い場合、医学的リハビリテーション(以下、略してリハビリ)をおこないます。低下した言語や運動の機能を回復するため様々な訓練をおこない、社会復帰を目指すための医療です。
リハビリは3つの段階に分けられ、段階によって目的や内容が変わります。リハビリの内容が時期尚早だったり、また遅すぎたりしてもいけません。段階に応じた適切なリハビリをおこなうことが大切です。
では、いつどのようにおこなうのでしょうか?
今回は高齢者に多い病気の脳卒中(脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血など)を例にしてリハビリの3段階を紹介します。
- 急性期リハビリ
急性期とは、発症から2週間ぐらいまでの期間です。この時期は体の状態が安定しないため、状態を入念にチェックしながらリハビリを開始します。急性期の段階では、脳卒中とは直接関係のない廃用症候群(生活不活発病)を予防することが目的です。廃用症候群とは、長いあいだ体の機能を使わなかったり、考えることをしなかったりすると、手足の筋肉がやせて関節が固まって動かしにくくなったり、うつや認知症状が出てきたりする状態のことです。廃用症候群の予防でおこなわれるリハビリは、次のようなものがあります。
- 手足の関節を動かす
- 床ずれ予防のための体位変換
- 座位を保持する
- 食べ物や飲み物を飲みこむ嚥下訓練
- 回復期リハビリ
回復期とは、発症から3か月(長くても6か月)ぐらいまでの期間です。この時期は体の状態が安定してきます。回復期の段階では、ADL(日常生活動作)の向上が目的です。リハビリ専門病棟でおこなうか、リハビリ専門病院へ転院しておこないます。ADLの向上のためにおこなわれるリハビリは、次のようなものがあります。
- 片麻痺が残ったためにおこなう歩行訓練や作業療法
- 脳の言語をつかさどる部分がダメージを受けて言語障害(失語症・構音障害)が残ったためにおこなう言語療法
- 脳がダメージを受けて高次脳機能障害(記憶力や注意力、集中力などの低下)が残ったためにおこなう認知機能訓練
発症から3か月を過ぎると徐々にリハビリによる症状の改善は少なくなっていきます。回復期は今後の生活を考えながらリハビリしましょう。
- 維持期リハビリ
維持期とは、回復期が終わって自宅や施設でリハビリをおこなう期間です。維持期では、これまでのリハビリによって回復した機能や能力をできるかぎり維持、向上させることが目的です。介護保険の適用で、医療機関や介護保険施設(通所リハビリ)、自宅(訪問リハビリ)などでリハビリをおこないます。維持期でおこなわれるリハビリは次のようなものがあります。
- 歩行訓練や作業療法
- 言語療法
- 認知機能訓練
- コミュニケーション訓練
- そのほか日常生活に必要な訓練
リハビリの最終目標は、病気になる前の生活に戻ることです。
各段階に応じた適切なリハビリで、目標に向かって一歩一歩進んで行きましょう!