聴覚障がい者にとって、音の情報を得られないことは、コミュニケーションを取ったり安全を確保したりするうえで、困難なことが多くあります。そこで、日常生活上の不便を補うために、障がい者自立支援法で定められた「日常生活用具」があります。日常生活用具とは次のように定義されています。
① 安全で簡単に使用できるもので、実用性が認められるもの
② 日常生活の困難を改善し、自立と社会参加を促進するもの
③ 製作や改良、開発にあたって、専門的な知識や技術を必要とし、日常生活品として一般に普及していないもの
今回は、聴覚障がい者の日常生活用具について紹介します。
- 聴覚障がい者の日常生活用具の種類
以下のようなものがあります。
① 聴覚障がい者用屋内信号装置
電話や来客、アラーム等を光や振動で知ることができる機器です。赤ちゃんの泣き声を知らせるベビーセンサー、強力な振動で起床時刻を知らせる聴覚障がい者用目覚まし時計、玄関チャイムが鳴ったことをランプで知らせる聴覚障がい者用屋内信号灯などがあります。
給付は、聴覚障がい2級以上の人を対象としています。
② 聴覚障がい者用通信装置
一般の電話に接続して、音声の代わりに文字等で連絡を取ることができる機器です。
FAXや文字電話等があります。
給付は、聴覚障がい者、発声・発語に著しい障がいがある人、コミュニケーションや緊急連絡の手段として認められる人を対象としています。
③ 聴覚障がい者用情報受信装置
CS放送の専用受信機です。テレビ番組の内容や出演者の言葉を字幕で読み取ることができます。火災時の緊急信号を受信することもできます。
給付は、聴覚障がい者で必要と認められる人を対象としています。
④ 福祉電話(貸与)
視聴覚に障がいがある人のために工夫された電話です。音が大きくなったり、文字でやり取りできたり、通信状態をランプで知らせたりすることができます。
貸与は、聴覚障がい者、視覚障がい者または外出困難な人を対象としています。
⑤ FAX(貸与)
市販されているFAXの中から、使いやすいものを選ぶことができます。
貸与は、聴覚、または音声機能もしくは言語機能障がいで電話では意思疎通が困難な人を対象としています。
これらの日常生活用具の給付条件や種目、金額については市町村によって異なります。申請の際は、お住まいの市町村の福祉課へ問い合わせてください。
- 手話や市販されている便利な用具
聴覚障がい者の最もよく使われている意思疎通手段といえば、手話があります。また、市町村の給付・貸与の対象にはなりませんが、聴覚障がい者のために工夫されたさまざまな便利用具も市販されています。
① 手話
手指の動作や表情などを使って意思を伝達する言語です。
② 骨伝導ヘッドホン
骨による音の伝導を利用して、音波が耳周辺の骨に集まりやすいようにしたヘッドホンです。
③ 筆談グッズ
磁気パネルにマグネットペンで書いたり消したりできる筆談ボードです。ワンタッチで消せるタイプや、表面を傷つけなければ専用ペン以外で書くことができるタイプもあります。
④ スマートフォンの聞き取りアプリ
アプリを起動しておくと、周囲の音声をスマートフォンのマイクで拾い、聞き取りやすく最適化してイヤフォンから出力してくれます。
聴覚障がい者のために工夫されたさまざまな用具を活用すると、毎日の暮らしが快適で豊かなものになりますね!