扶養の範囲、保険料の基礎知識
まずは基本的な、被扶養認定の条件確認を確認していきましょう。論理的に「社会保険加入義務発生要件を満たさないこと+扶養要件を満たす事」が必要になります。ここではでは、社会保険=健康保険・厚生年金という前提で説明をしていきます。
Ⅰ、【加入義務の発生する労働時間・日数】
- 一日または一週間の所定労働時間が一般従業員の4分の3以上
- 一か月の所定労働日数が一般従業員の4分の3以上
一般従業員を一日8時間労働、一か月20日勤務とすると、4分の3未満とは、概ね
6時間労働、15日勤務という計算になります。
Ⅱ、【扶養要件】
- 年間収入が130万円未満かつ
- 同居の場合…被保険者の年収の半分未満の年収
- 別居の場合…被保険者からの仕送りの額未満
- 同一世帯であること。配偶者、直系尊属、子、孫、姉妹以外の3親等以内の親族。
基本的な情報というと、加えて必要なのが、具体的にいくらの保険料になるのか、こちらを説明していきます。扶養家族であれば、保険料は社会保険にメインで加入している被保険者一人となります。大雑把にいえば、今年(9月~翌年8月)の保険料(健康保険・厚生年金)は、毎年4・5・6月の収入の平均によって決まります。計算の基礎となるのは、標準報酬月額と言われる表です。この保険料表と報酬額を基に保険料を算出し、その保険料を、事業主と折半します。そうやって出てきた数字が我々の給与から控除されます。今までは漠然と天引きされていましたが、一度ご自身の給与明細で、いくら控除されているか、確認してみるといいかもしれません。
【例-1:参考、協会健保管掌の健康保険・厚生年金保険】
- 東京・健康保険・標準報酬月額
等級(1~50)/報酬額 | 健康保険料 | 労働者負担分 |
1 / 58,000円 | 5,776円 | 2,888円 |
10 / 134,000円 | 13,346円 | 6,673円 |
20 / 260,000円 | 25,896円 | 12,948円 |
50 /1,390,000円 | 138,444円 | 69,222円 |
- 厚生年金・標準報酬月額表
等級(1~30)/報酬額 | 厚生年金保険料 | 労働者負担 |
1/ 98,000円 | 17,471円 | 8,735円 |
10/170,000円 | 30,307円 | 15,153円 |
30/ 620,000円 | 110,533円 | 55,266円 |
【例―2】標準報酬月額30万円のサラリーマン、協会健保加入中
健康保険料…等級22 保険料2万9880円、負担14,840円
厚生年金…等級18 保険料5万3484円、負担26,742円
控除額…計41,582円
ざっくりと、イメージだけでもつかんでいただけたでしょうか。4・5・6月の報酬によって決定する標準報酬月額ですが、勘のいい人は、4・5・6はあまり収入が多くない方が、保険料が低く収まる、と気づいた方もいることと思います。このようにシステムを知っていると、戦略的な働き方ができますね(実際できるかどうかは別として)。
社会保険に加入することのメリット
それでは、主婦のパートタイマーなどで、夫の扶養をはずれ、社会保険に加入した場合のメリットとはなんでしょうか?「収入を気にせず働ける」これに尽きると思います。
しかしながら、パートタイマーで働いている人は、理由があってのパートタイマーなのではないかと考えます。厚生労働省のアンケートだと、働いている理由として挙げられるのが、「主たる稼ぎ手ではないが、何らかの家計の足しにするため」という回答が56%と最も高い割合となっていて、配偶者収入+パート収入という図式が成り立っているといってもいいでしょう。
そして配偶者の収入+パート収入で生活ができ、扶養範囲であれば、保険の恩恵を受けることができるので、自身で社会保険に加入するメリットは、それほど無いといえるのではないでしょうか。
しかし、傷病手当金・出産手当金など、病気・出産の時の健康保険からの給付を受けることができるようになるので、もしもの時のことを考えるのであれば、社会保険に独自に加入するメリットがあります。
パート従業員が社会保険に加入したくない理由と、2016年10月までにすべき会社の対応
社会保険に加入したくない理由として、真っ先に考えられるのが、手取り額の減少です。そして、2016年10月から始まる新しい社会保険制度では、130万円の壁なるものが撤廃され、代わりに「106万円の壁」ができます。月収に換算すると88,000円です。
年収130万円(月額108,000円)を目標として稼いでいた人は、同じ時給であるかぎり、社会保険料を支払う義務が発生してしまうということです。時給1000円と換算すると、108,000円だと、厚生年金保険料9,270円、健康保険料5,179円が控除され、93,000円程度の収入になります。
ここで会社側として提案できるのが、①今と同じ働き方で社会保険料を納め、手取りを減らす②手取り損失分、働く時間を増やす③社会保険から逃げるために、労働時間を調整する。のどれかであると言えます。
会社側としては、早期に拡大時の納付対象者をピックアップし、社会保険納付の必要性を説いた上で、上記の提案をすべきかと考えます。会社としても費用負担の観点から、躊躇ってしまう場合もあることと思いますが、トラブル回避のためにも、労働者確保のためにも、真摯な対応が肝要です。