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労働者災害補償保険法(労災保険法)が素人にもわかる簡単解説

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労働者災害補償保険法の成り立ち

 

(以下、労災保険法)とは、いわゆる「労災・ろうさい」と呼ばれる、労働者が業務上又は通勤途中、いわば“業務災害”で負った怪我や病気に対して、国が治療費などを負担してくれ、休業で給与が支払われない場合に、一定の金額が給付される制度に関する法律です

業務災害とは、例えば

 

  • 勤務する食品工場で機械に手を挟まれて骨折してしまった
  • パートで勤めていた倉庫業務で、作業中に足の上に荷物が落下、打撲。
  • トラック運転手が、交通事故で死亡

 

などを挙げることができます。

 法律の目的としては、その第一条に『労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO050.html引用)』とあります。

 

ポイントとしては、「迅速かつ公正な保護」という文面をどう解釈するかです。本来であれば、事業主は業務を理由にした怪我や病気を負うことになってしまった労働者に対し、安全配慮義務(労働契約法5条)ないし、債務不履行(415条)による損害賠償を行う必要がある。しかしながら、この規定を執行させるのに、労働者側は、病気・怪我と業務の間の因果関係の立証及び訴訟手続きを始めとした、莫大な時間と労力と費用を覚悟しなければいけません。

それでは訴訟提起→勝訴からの賠償額確定→執行までのプロセスにおいて、労働者は単に裁判所の決定を待つほかなく、その間の生活や治療費は全て実費になり、労働者の生活は破たんしてしまうでしょう。それを防ぐためにできたのが「労災補償」です。

要するに、毎月事業主が保険料を国に収め、万が一労働災害が発生した場合、国が調査し、事業主の代わりに国が労働者の補償をする、という事で、自動車・生命保険と同じ類のものです。

 

労働者災害補償保険法だけの特徴

 

同じ怪我や病気の際に使用するのが、健康保険です。健康保険を利用する際に、治療費が1~3割負担になるので、国民全員が馴染みのある制度だと言えます。すると、多いのが、知ったうえで、もしくは知らないで、労働災害に対し健康保険を使わせる、という事業主です。これはいわゆる「労災隠し」という事件になり、犯罪です。

健康保険と圧倒的に違うのは、「遺族補償給付」の有無です。健康保険があくまで、被保険者に対して補償がなされるのに対し、労働災害補償では、業務災害により労働者が死亡してしまった場合、その遺族に対しても補償がなされます。

その分、労働災害に健康保険を使用することは、健康保険法の趣旨にも反しますし、万が一労働者死亡の場合、遺族が過去に遡り、複雑な訴訟を起こされたり、刑事事件として立件されたりする可能性も否めませんので、もし労働者に何かあった場合には、慎重な対応が求められます。

 

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労働者災害補償保険法の保険給付の流れ

 

では労災発生からの、一般的な流れを説明します。

 

【治療費】

災害発生→指定病院で診療→事業主が所定の請求書に証明事項を記載し、指定病院に提出→都道府県労働局へ、病院から請求書を提出→労働局から労働基準監督署へ→労働監督署の審査→労働災害適用認定がおり、病院へ支払。

 

【休業補償】

災害発生→休業→休業補償請求書に事業主・医療機関の証明→労働基準監督署に提出→厚生労働省より支払い

おおまかな内容だとこのようになります。不明な点や、個別的にどのような手続きが発生するか不安な場合は、所轄の労働基準監督署や労働局に問い合わせれば確実です。

 

労働者災害補償保険法の給付対象

 

まずは労働災害であると国が認めなければいけないため、労災の定義を記述していきます。あからさまな労働災害であれば良いのですが、精神疾患等もふくめ、多種多様な病気がでてきましたので、裁判上の争いにもなっているほどです。しっかり理解し、担当者は実務に反映させていきましょう。

業務災害とは、「労働者が業務中もしくは通勤途中に怪我や病気にかかり、またはそれが原因で障害発生若しくは死亡してしまうこと」、と定義されています。一言で片づけてしまえば簡単ですが、裁判で争点となるのが、「業務と怪我・病気」の「相当因果関係」です。

最近の動向を踏まえて実例を紹介すると、「精神疾患」が、この因果関係の問題を難しくする最たる原因といっていいでしょう。

簡単にいうと、その「うつ病」や「適応障害」は、業務と関係ないのではないか

という疑念です。人間だれしもストレスを抱えています。家族との人間関係、プライベートでの金銭トラブル、運動不足等々。「それって会社のせいじゃないよね」という労基署の労災不認定処分に対し、労働者側が不服申し立てや処分取消を求めて裁判を起こす事案が多発しています。

ただ、精神疾患者が増えてきた一方、「長時間労働による過労死」「パワーハラスメント、マタハラ、セクハラなどのハラスメント」などの問題も深刻であり、平成23年に厚生労働省は「精神障害の労災認定」という指針を打ち出しました。

精神障害は様々な要素から発病するものであると認識したうえで、精神障害の認定要件を定め、それに当てはまる場合にのみ、労災を認めています。

 

 まとめ

労災認定一つにしても、年々案件が複雑になっていますので、担当者は問題を事前に防ぐ安全配慮に努めることはもちろん、健康診断など、日々のケアを怠たらないことが肝要です。

 

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