外国人技能実習制度の導入を検討される企業は人材不足に悩んでいます。
そんな中で派遣や人材紹介などと外国人技能実習制度はどちらが得かなどとお考えになったことがあるのではないでしょうか?
果たして、貴社にとって外国人技能実習制度はメリットのあるものなのか?
また、なぜ多くの大企業や、業界の各社が外国人技能実習制度をこぞって導入しているのか?
非常に不思議に感じていませんでしょうか?
本章では、この部分について調査を行ってみました。
各種サービスのメリット、デメリットの比較に入る前に、なぜいま人手不足なのか?
背景をおさらいさせてください。
(あわせてこちらもご覧ください。外国人技能実習制度に注目する3つの理由)
1.求人倍率の急激な変化について
2015年からすでに、少子高齢化、震災、オリンピック景気を背景に求人倍率がバブル期を追い抜く勢いであることは既にご承知のことと思われます。
2016年の8月時点では、一般の求人倍率が1.46と30年ぶりの高数値となっています。
また、建築、造船などの3Kといわれる工場分野ではすでに求人倍率は3倍を超えたのではないか?という状況であると大手造船会社の幹部が語っていました。
人材採用関連業界では、このまま求人倍率は続伸して、日本全体で1.8倍、3K業種においては3.0倍になると言われている
このままではバブル期を超えていくかもしれませんね。
2.今後の人口推移について
日本の少子高齢化の状況について
当サイトでたびたび頻出されていますが、こちらの経済財政諮問会議の調査会資料に掲載されたグラフをご覧ください。
日本人は減り続けることが読み取れます。
このような状況で、日本の未来は人手が余るように見えますでしょうか?
どのような未来がくるのか? この表をみればおのずと推測ができます。
2025年には介護はどうなってしまうのでしょうか?
これが人手不足の二つめの理由かと思います。
※「2025年問題」とは、団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者
(75歳以上)に達する事により、介護・医療費等社会保障費の
急増が懸念される問題です。
3.留学生のアルバイト時給の高騰について
人手不足の3つ目の理由としては。。。
政府は、最低賃金を全国平均で1000円以上にすることを目標に掲げています。都心部では、1300円でも人が集まらない状況になってきています。
また、いままで日本語が不自由なので安価な労働力とされていた外国人留学生のアルバイト賃金が、訪日観客対応という職種で急騰しています。英語、日本語に加えて、出身国言語を扱えるというのは大きな優位性となっているようです。
特に中国語圏の出身者は、優遇されている時代になりました。現在、国内に15万人ほどが在留しているそうですが、コンビニの求人にさえ、以前より反応が取れないと嘆かれています。
理由は、簡単です。 訪日客対応ができるアルバイトの時給は高いのです。(2016年当時)1500円を超え始めています。
爆買という現象が一瞬で沈静化していくと見えたのですが、やはり観光立国した日本への訪日客は増加の一途をたどっている状況です。
もう、3Kの現場に外国人留学生が戻る事は2020年のオリンピックの終了から5年ほどは観光客対応などの需要が増加するらしいので、なかなか難しいのではないでしょうか?
また身近なケースで見てみますと実際に、東京都心のコンビニエンス・ストアや、ファミリーレストラン、ファーストフード店には高額な時給が張り出され、働いているのは外国人労働者ばかりです。
外国人留学生のアルバイトなどの時給の安い労働力を調達する事が困難な時代に突入したようです。
以下は独立行政法人日本学生支援機構が平成28年にまとめたデータですが、約半数はすでに時給1000円以上です。時給2000円以上のアルバイトをしている「日本語教育機関」の学生(という名の・・・ですよね)が多いことにも驚かされます。
以上の3つの視点をおさらいした上で、企業はどう考えるべきでしょうか。
労働力の調達という観点から、安い調達方法はなくなりつつある。。。というのが読み取れるのではないでしょうか。
上記の3つの要因から見えてくるのは「人手不足」の未来
そこで政府、経済界が徹底した活用を決めた制度が、「外国人技能実習制度」なのです。
この未曾有の大人手不足時代が到来するなかで窮余の策といってもいいでしょう。
企業のニードと市場環境について
もう安くて便利な人材なんてものは世界的に探してみてももいないのではと思える情報も出て来ています。
日本国内にはまったく無関係に見えても、アジアではグローバルな人材争奪戦の時代に突入したと言える状況になって来ています。
以下がアジアの高齢化問題についての厚生労働省の資料です。
アジア各国の少子高齢化問題
驚いたことに、日本が一番先に突入したのに、もうすぐ、アジア各国に少子高齢化まで抜かれてしまうというのです。
中国の高齢化社会の突入が2025年となっているのですが、状況が違っていることが指摘されています。
さらに、14億の人口を抱える中国で10%が65歳を超えていくと、1億4000万人の老人が生まれてしまうという事が問題となっているそうです。物理的に1億4000万人の介護要員はアジア全体でも調達が不可能なのでは?という状況になりそうです。
中国、香港、台湾では、ここ数年、国家レベルで積極的に外国人家政婦や介護労働者の育成・採用に力を入れているそうです。
いまこの時点でもはや、アジア全体が人手不足に陥ってしまうような状況です。
このような前提を踏まえたうえでこれからの情報をお読みください。
私たちの日本をとりまく社会環境は大きく変化し始めているという事を理解したうえで、ここだけ見ていますと、もう日本の外国人技能実習制度すら机上の空論に思えてきます。
現在の日本政府の外国人労働者戦略では、「外国人技能実習制度」もアジアの争奪戦で敗北する可能性が高まっていると感じてしまいます。
「外国人技能実習生制度」と「人材派遣」、「人材紹介」の比較
日本社会には、1990年代までは禁止されていた解禁され「人材派遣」、「人材紹介」という巨大な産業が存在している状態となっています。それまで禁止されていた業務が業界として発展する背景には、人材の流動化という名目で人材問題の解決策として急拡大してきた業界なのは、多くの方がご存知でしょう。
しかし、いま、派遣業界と人材紹介業界に大きな変化がおきはじめています。
これによって、いままでのメリットとデメリットではない問題が表れはじめています。
以下に整理してレポートをさせていただきます。
人材派遣のコスト、メリット、デメリット
外国人技能実習生の利用できる職種範囲だけで切り分けて整理してみます。
派遣のコストは、給与+約30%の手数料=時給1500+30%なので、
約2000円×8時間×20日間営業=約30万円
くらいが相場と言われています。
派遣のメリットは、採用コストをかけずに交代要員を補充してくれる事。メンタル、スキルの基礎教育は派遣会社が行うことです。
一方、派遣のデメリットは、能力で人材を選択することが出来ない事です。
これらが、肉体労働系、作業系(いわゆるガテン系)の派遣の従来の流れでした。
ところが、昨今では事情が変わってきたようです。下の表をご覧ください。
人材派遣業市場規模推移
出典:「人材ビジネス市場に関する調査結果 2014」矢野総合研究所
まずご注目いただ生きたいのは、現在、人材派遣市場はスッカリ成長が止まってしまっていることです。
理由は、派遣社員として働きたいという人が激減しているのです。
同じ仕事をするなら正社員でというのが、働く人たちの判断になっているのです。
現在は、若者の一番なりたい職業が公務員という時代です。
そんな事情から、不安定な派遣社員という選択がなくなりつつあるようです。
ちなみに、別の統計では、大手(ガテン系)数社を合わせた未処理人数(人材派遣要望がありつつ対応できない案件)は、日本全体で30万人を超える事態となっているとの事です。もう時給をあげても集まらない。。。そんな派遣会社さんの嘆きも聞こえてきます。
人材派遣会社さんは現状では労働力の調達ができていない状態です。
この状態で「外国人技能実習生」は「派遣社員」と比べて高い、安いなどという議論に意味はないように思えますが、
事実として調達ができる外国人技能実習生と調達が困難な人材派遣という構図は考慮すべきでしょう。
また、この人材難時代において人材派遣業界では別の問題も起きています。
それは、せっかくきた人材が1年も働かずに退職していくことです。
やめてもすぐにより高額な仕事がある時代においては、仕方がないことなのですが。。。
この点も3年間の実習という性格を持つ外国人技能実習制度においては「転職を認めない」ことがメリットとなっています。
人材紹介のコスト、メリット、デメリット
人材紹介のコストは、年間給与+手数料として年給の30%=年給が300万円だとしたら、100万円の紹介手数料を支払うことです。
人材紹介のメリットは、紹介され入社を前提としているので能力、実績がある人材を採用広告と採用手法などの煩わしい作業がなく採用できる事です。
一方、人材紹介のデメリットは、紹介料の高さ、紹介された人材が長期に定着してくれないことがあげられます。
派遣とちがって、人材紹介の場合は、1年で退職してしまった場合などは、新しい人の紹介を受けるには、同じく30%の手数料が発生しますので、採用関連コストが非常に高額になっていく傾向があります。
従来でしたら、人材派遣をバランスよく利用して避けていくのが経営の判断だったのですが、人材紹介業界の市場規模を見ていると少し違っているようです。
下の表を見てください。同じ出典から引用させていただいた資料です。
人材紹介業界の市場規模は、2009年から約2倍になっています。2015年も約1,5倍になっていたと記憶しています。
人材紹介をはじめてとした採用関連業界の売上も2009年から3倍に成長しています。
その規模なんと2,4兆円を超えています。
人材紹介は、どうしてもエグゼクティブな人材の印象があるのですが、現在では、オペレーターや事務員さんもこの対象になっているようです。
ウチでは使う事ないかな?関係ないよ!
という声が聞こえてきそうですが。。。。。
問題は、この5年間で3倍に成長してしまったという事なのです。
これは実際に、私たちが大手の人材紹介会社に訪問してヒアリングしてきた声なのですが。。。。
「年商100億以下の企業さんに営業する必要はないし、口座を閉める方向で進んでいる。」
との見解でした。
理由と背景としましては、
ここから20年の間、日本人労働者は永続的に不足する事が明確である。
この中で、
人材にとっても、企業にとってもよいマッチングを行うには、日本の根幹たる超大企業さまに人材をご紹介し、相互によい労働環境を作るお手伝いをする事である。
★実際に考えてみれば、同じ単純労働でも超大手企業の正社員労働者であれば年間数百人の紹介手数料を見込めますからね。。。
そのようなお考えなのだなという印象でした。
まとめ
貴社は、よい人材を紹介してくれる紹介会社様、派遣会社様とよい取引関係にあるのでしょうか?
もしそうであるならば、それは最高の事です。よりよい取引実積を積重ねて行く方がよいかと思います。
しかし、そうでない企業様はどうしたらよいのでしょうか?
本来ならば、費用、予算のコスト面や、企業としての機能面を、詳細に整理してサービスに対する比較を行うことが当然なのかと思うのですが。。。。
絶対的に労働者となる人材がいない。。。。
もう、そんな事は無意味な時代に突入しているのです。
貴社に人材採用関連産業が営業にきているでしょうか?
来ているのは採用広告の会社だけかもしれません。
派遣や紹介という企業からの営業は来てないのではないでしょうか? 来ていない状態ならば、それは貴社の責任ではなく、市場の環境によるものなのです。
政府や産業界は、すでにこの時代を予測していたのです。
だから、外国人労働者の雇用手段として、「外国人技能実習制度」を拡充してきたという意図がみてとれます。
これからの企業の人材育成の戦略はどのような方向に向かうのでしょうか?
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