(イラスト:いらすとや)
<どんな検査をするの?診断は?>
原発性胆汁性肝硬変の検査としては、その代表的なのは血液検査です。
血液検査では、赤沈の亢進やアルカリホスターゼ・ガンマなどを調べて行きます。
いわゆる、胆道系酵素の血中レベルの上昇を観ます。
これ以外としては、高コレステロール血症・血清銅値をみますが、だいたいは血清銅値の上昇がみられるようになります。
これは胆汁の流れが悪くなるために、ビタミンA・ビタミンD・ビタミンE・ビタミンKなどの脂溶性ビタミンの吸収も悪くなります。
これが原因となり、骨粗しょう症になっていく原因となります。
確定的な診断としては、腹腔鏡下もしくは超音波下で肝生検を行います。
そしてこの病気の特徴である「慢性非化膿性破壊性胆管炎」がないか観ていきます。
ただ、区別する疾患としては、慢性肝内汁うっ滞性が共通した臨床を示す薬剤起因性肝内胆汁うっ滞と肝内性原発性硬化性胆管炎・成人性胆管減少症・閉塞性黄疸などがありますが、これらの病気のいずれも抗ミトコンドリア抗体が陰性となります。
(イラスト:いらすとや)
<治療方法はどうやるの?>
治療法としては、大きく分けて3つに分けられます。
それは、一つ目は食事療法、二つ目は薬物療法そして三つ目は肝移植となります。
①生活状態と食事について
診断がはっきり出た後は、定期的な検査を受けて経過観察をしていきます。
無症候性の場合はもちろん、症候性であっても症状が落ち着いていたり、ウスソデオキシコール酸などの服用で、その経過が良い場合も同じ薬の服用を続けながら、普通の日常生活を送れます。
食生活からは、銅含有量が多い食べ物である貝類やレバー・きのこ類・チョコレートなどは避けなければなりません。
胆汁分泌が良くないことを考えて、脂肪分を摂りすぎないことが大切となってきます。
特に黄色種や高コレステロール血症である場合は、高脂血症に応じた食事療法が大切になってきます。
骨粗しょう症は、中年以降の女性には注意が必要となります。
カルシウムやリン・亜鉛などのミネラルなどの摂取と適度な運動による骨塩量の減少にきをつけなければなりません。
②次に薬物療法としては、はっきりいうと確立された治療法はありません。
しかしその中で有用性が認められているのは、ウルソです。
正式名をウルソデオキシコール酸と肝移植になります。
それから対照的にはなりますが、高脂血症にベザフィブラート(ベザトールSR)の内服を服用し、皮膚のかゆみにコレスチミド(コレバイン)や抗ヒスタミン薬(ポララミン・ジルテックなど)服用を、そしてビタミン吸収障害に脂溶性ビタミン製剤(A・D・K)の注射などで対処していきます。
(イラスト:いらすとや)
初期の原発性胆汁性肝硬変や自己免疫性肝炎を合併している場合は、コルチコルテロイド(副腎皮質ホルモン薬)を適用されます。
しかしこれを長期で使用していくと、骨粗しょう症を悪化させることになります。
シェーグレーン症候群での症状である眼の乾燥や口の中の乾燥などに対しては、人工涙液や唾液などを使います。
原発性胆汁性肝硬変に使用されるUDCA療法では、残念ながら治癒するという報告はありません。
しかし、血液化学検査では、総ビルビリン・トランスアミナーゼという薬が改善するとされています。
アルビミンや凝固能は変わりはありません。
またその他の報告に、皮膚のかゆみや全身倦怠感などの自覚症状は変わらないという報告が出ています。
また、最も大切な肝生検組織像や生存率の影響については一致された見解がありません。
ただ、UDCA療法が普及して十数年が経過しますが、この病気の生存率は改善されてきた印象があります。
ただ、実際には経過はゆっくりであり、患者によっては病気の進み具合がいろいろなので、肝組織や生存率の改善の判断はたくさんの患者さんについて、長期的に観察していく必要があります。
ただ、ここ最近のことではありますが、高脂血症治療薬であるベザフィブラートは、胆汁うっ滞の胆管障害とそれに伴う炎症の改善や免疫調整作用などの、いろいろな効果があることが明らかにされています。
それに、ベザフィブラートの単独または、UDCAとの併用治療が肝内胆汁うっ滞の改善に有効であるという報告があります。
③肝移植について
原発性胆汁性肝硬変は、肝移植が適した疾患です。
日本では欧米と違い、脳死肝移植はまだまだ少数派ですが、生体部分肝移植は行われることが多いです。