外国人労働者と働く

外国人労働者の良いところ、悪いところ

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以前、アルミ製品を製造している工場で働いていた時、最初の頃の現場には日本人しかいませんでした。私が働いていた場所は汚く重労働で低賃金という現場だったので、人が入っても数か月で辞めていき、常に人が足りない状態で、製品の納期に間に合わせるために夜の0時まで残業することも日常化していました。派遣で働く人たちはお金が欲しいので毎日のように好きなだけ残業していましたが、ある日労働基準監督署から注意され一か月の残業時間の上限ができました。上記の理由で常に納期が遅れている現場は、他の部署で仕事ができず持て余されている人材が助っ人として送り込まれ、そのまま戻されることなくいつの間にか辞めていくという流れができている場所でもありました。_x000D_
 そんな現場でフィリピン女性Mが働くことになりました。彼女は十年以上前に来日し、夜はフィリピンパブで昼は工場で外国人労働者として働き、日本人とも結婚していて日常会話ができるくらい日本語が話せるという方でした。Mが現場で働き始めてから一か月もしないうちにRというフィリピン人女性が派遣社員として入ってきました。Rもまた十年以上前に来日し外国人労働者としてパブと工場で働いていたそうですが、日本語は話せませんでした。どうしてなのかMに聞くと「Mの離婚した旦那さんは家でもMに日本語を教え、Rの離婚した旦那さんはRに合わせて英語で会話していたから」ということでした。「家庭での教育って必要なんだな」と思いました。_x000D_
 その後フィリピン女性の数は数か月で5名になっていました。全員Mが係長に頼んで入れてもらったそうで、そうして働き始めたフィリピン人の外国人労働者は現場の他に検査課にも数名いると聞き、フィリピン人のネットワークの広さに驚きました。Mによると仕事を探すフィリピン人は知り合いに頼んで仕事を紹介してもらうのが普通で、1人フィリピン人が職場に入ると知り合いを呼ぶので短期間でフィリピン人の労働者が増えるのが常なのだそうです。_x000D_
 厳しい環境の現場でしたがフィリピン人の女性たちは毎日楽しそうに仕事をしていました。Mは「仕事が辛いから冗談を言って笑って仕事するんだよ」と言っていました。彼女たちと仕事をするようになってから仕事が楽しくなったので私も「そうだよな」と納得してしまいました。仕事時間に冗談を言い合うのを始め、中には現場に持ち込んだ携帯と無線型のイヤフォンを使用し、スカイプでフィリピンに残してきた子ども二人と会話をしながら仕事をするRという女性も現れました。注意するといつの間にすり替えたのか耳にボールペンをさしていて「これはボールペンだよ」と熱弁し、必死でごまかし続けます。そんなことが何度も続くと「あなたボスじゃないでしょ!」発言が始まります。外国人労働者の大半は先に働いている日本人派遣の指示をストレートに聞きません。それはフィリピン人に限らず中国人やブラジル人、ナイジェリアの人もそうでした。なぜなら「貴方は社員ではないから。私は社員と上司の命令しか聞きません」という考えなのだそうです。_x000D_
 そんな考え方なので真面目な外国人労働者以外は私の注意は聞かず、私から仕事を覚えようともしません。私も2~3回指示と注意をして無視する方は放っておくようになりました。当時の現場で一番長く働いていましたが、会社全体が派遣に対し差別的だったので、会社が困っても構わないと思うようになっていたからです。私が別のラインに移動しても係長は派遣労働者と接しようとせず放っておいていたようで、案の定クレームが多発しました。納入先に選別しに行くことも多くなり常務と専務に叱られた係長は、外国人労働者たちに細かく指示するようになったようです。_x000D_
 外国人労働者たちは私に指示されると「大丈夫!」と笑顔で返答し、そのまま私が見ている前で基準から外れた製品を流し続けるので、彼女たちが帰宅した後に一人で終わるまで修正し続けたことは今では良い思い出です。そんな状況も知らずに私がいた時と同じように現場に近寄らず、外国人労働者に任せきりにしていた係長の卵のように丸々ツヤツヤだった顔は、私が他のラインに移動して一年が過ぎた頃にはシワシワのおじいさんのようになっていました。「大丈夫!」発言は係長にもしているようで「本当に見えているのか!?」「おまえいい加減にしろよ!」と係長が彼女たちに怒鳴っている姿は私が工場を辞める日まで見られました。_x000D_
 約4年間、中国とフィリピンの女性たちと一緒に仕事をしてきて上記のような事柄もあったけれど、誕生日をお祝いしてもらったり、お菓子をもらったり、英語を教えてもらったりと楽しい思い出の方が多いので、たまに現場に戻って一緒に働きたいと思うことがあります。メールアドレスを教えてもらったので、今の仕事に余裕が出来たら皆と会えるか連絡してみようと思っています。

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