「認知症行方不明者、保護されても身元わからず」
2,3年前からこのようなニュースがたびたび報道されています。
徘徊や幻覚が始まると介護をしている家族にとっても大きな問題となってきます。
認知症は進行すると「少し前のことも忘れてしまう」といった精神障害だけでなく身体機能も低下し、寝たきりになってしまします。
介護者にとっても介護と仕事の両立は難しく、介護者の「介護離職」も増えてきました。
しかし、認知症は早期から進行に応じたケアや対処をすることで病状の緩和や進行を抑えることができるのです。
早期に発見し、専門医を受診することは認知症の本人のみならず家族や周囲の介護者にとってもその後の生活を送るうえでとても重要なことといえます。
■認知症とは
今や高齢者の4人に一人が認知症および認知症予備軍といわれています。
認知症とは下記のような疾患により脳にさまざまな障害が起こり生活するうえで支障が出ている状態を指します。
・変性疾患
脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく病気。
アルツハイマー病、前頭・側頭型認知症、レビー小体症など
・脳血管性認知症
脳梗塞、脳出血、動脈硬化などにより栄養や酸素がいきわたらなくなった部分の神経細胞が死んだり、ネットワークが壊れてしまう病気。
■認知症の症状と受診のポイント
脳細胞が壊れることによって起こる症状は記憶障害・見当識障害・理解判断力低下・実行機能低下です。
これらの障害に加え、本人がもともと持っている性格や環境などの要因により日常生活を困難にする問題が起こってきます。
この中で記憶障害と見当識障害は比較的早くから現れる障害です。
(見当識障害…「時間や季節感が薄れる」「方向感覚がなくなる」など)
・こんな時には要注意!
物忘れがひどくなってくると「認知症かしら」と心配になりますが、多少の物忘れというのは加齢により誰にでも起こるものです。
もし以下のような症状がある時には医療機関で受診することをおすすめします。
季節に合わない厚着・薄着をしている。
温度にあった衣類の調節ができない。
歩いていけない距離を歩いていこうとする。
自分の年齢がわからない。
■早期発見・早期受診で自分らしい生き方を
認知症が疑われても脳腫瘍や慢性硬膜下血腫などの場合は脳外科的な処置で良くなる場合もあります。
薬の不適切な使用が原因で認知症のような症状が出た場合には薬をやめるか調整すれば回復します。
しかしこのような状態を長期間放置すると脳細胞が委縮し回復が困難になります。
最近ではアルツハイマー型では薬で進行を遅らせることもできるようになりました。
早期に薬を使い始めることで今までと変わらずに日常生活を送れる時間も長くなります。
「あれ?おかしいな」と思う症状があれば1日も早く受診しましょう。
なお認知症の初期診断はCT・MRIなどの画像検査、記憶・知能などの心理検査に加え
認知症症状を起こすほかの病気でないことを確認する検査などを行います。
できる限り専門の医療機関で受診しましょう。
認知症は本人はわからないと思われがちですが、症状が出てくると周囲が気づく前から本人は漠然と気づいているものです。
初期のころは本人も家族も「まさか、自分が…」「あんなにしっかりしていたのに」と
とまどい、否定する気持ちが強くなり、打ち明けられずにいる人も多いかもしれません。
しかし、障害が軽く自分自身で病気が理解できる初期のうちに受診し、理解を深めることができれば、その後の生活を変わらずに過ごす時間も長くなりトラブルを回避したり軽くすることができます。
早期発見・早期受診により、その後もし障害が重くなることがあってもそのときのことを早い段階から考え、自分で準備することができれば、たとえ認知症であっても自分らしい生き方を続けることができるのではないでしょうか。
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