外国人労働者の雇用において大切なことは制度を理解して正しく運用し、事故を起こさないこと。
そのために講じる手段として有効なのは保険をおいて他にはないかもしれません。
そういう意味ではしっかりと学び、比較検討して保険を選ぶことは成功の秘訣と言えるかもしれません。
1.なぜ外国人労働者には外国人労働者保険が必要なのか?
外国人技能実習制度を導入する条件として、日本人と同じ労働環境を整える必要があります。
労働時間や休日の扱いも大切ですが、外国人技能実習生に健康で働き、生活してもらうことも大事です。
外国人技能実習生も病気になったり、怪我をしたりすることもあります。
そのため、外国人技能実習制度では社会保険(健康保険)、労働保険(労災保険、雇用保険)の加入を義務付けています。
さらに法務省の指針として、公的保険でカバーできない部分において、任意保険の加入外国人労働者保険である[外国人技能実習生総合保険など]にて技能実習生の保護に資するとしています。
実習生の世界では、外国人労働者保険への加入は当たり前なのです。
理由1【法務省ガイドライン「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」】毎年、不慮の事故や疾病に遭遇する技能実習生が見受けられることから、関係法令に基づき健康保険等に加入することはもちろんのこと、これらの公的保険を補完するものとして民間の傷害保険等に加入することについても、技能実習生の保護に資するものといえます。
技能実習生が生活の中で風邪をひいたり、虫歯の治療をしたりというのは、健康保険で本人が3割負担して治療しますが、業務中の大きな事故などは労災保険を適用することとなります。
しかし、国を出て異国の地で生活するとなれば、それだけですまないことも多くあります。
例えば入国から健康保険証が手元に来るまでの研修期間に技能実習生が病気や怪我をしたら、実際は会社が100%の治療費を負担することになります。
さらに、物を壊してしまったり、他人にけがをさせてしまったりした場合は健康保険等ではカバーできません。
この場合もほとんどすべてのケースで会社が補償額を負担することとなります。
リスクは職場内や寮の中だけとは限りません。
休日に自転車でお年寄りにぶつかり事故を起こしてしまったり、謝って他人の車を傷つけてしまうかもしれません。
昨今では賠償金も高額化しつつあります。相手に怪我をさせてしまった場合などは賠償額が1億円になった裁判例もございます。
ゆえに、3つの保険は必須となっています。
- 社会保険
- 労働保険
- その他を補完する任意保険 外国人労働者保険
実は、1と2の保険は強制加入です。
なぜ力説するかといいますと。。。。
外国人労働者保険がもっとも重要なので、絶対に忘れずに加入していただきたい!という事を念押ししているのです。
理由2 入国後の1ヶ月講習中は、社員ではないため御社の労災保険も社会保険も適用されない「無保険状態」です。
御社の技能実習生は、入国後の1月間は、監理団体の管下で「講習」に参加することになります。
しかし、この間は、御社の所属ではないために「無保険状態」となります。
この無保険状態を穴埋めするために、これらの保険が必要になります。
理由3 実習生が、勤務時間外に起こしたり、巻き込まれてしまった場合は、労災保険などで対応可能でしょうか?外国人労働者保険でないとダメなんです。
御社の労災保険の適用は、勤務時間中及び、通勤、帰宅途中に限定されるのではないでしょうか?
非常に悩ましい部分ではあるのですが、外国人技能実習生は、御社に帰属した社員になります。
この技能実習生は、24時間、365日不慣れな異国である日本の中で生活を行うことになります。
労災保険の対応時間外は、当然ながら無保険状態となります。
この時間をケアするのがこれらの保険です。
・たとえば自転車に乗れば自転車事故が・・・。(被害者にも加害者にもなりえます。)
・事故対応の際の通訳は、どうなりますでしょうか?
・事故後の示談交渉は、どうなりますでしょうか?
・休日のことなので、会社には無関係でありますが。。。
昨今流行している「労災上乗せ保険」という保険があります。
これもとてもよい保険なのですが、やはり、外国人技能実習生のすべての部分をサポートする事は不可能なようです。
外国人保険と、日本人労働者の保険ニーズの差はまだまだ補完されていないようです。
理由4 外国人労働者保険は、外国人労働者にまつわる様々な対応をワンストップで提供する機能です。
最近では技能実習生が犯罪に巻き込まれるケースも増えています。
不正な方法で母国に送金してしまったり、帰国時に携帯電話を転売してしまったりするケースなどです。
理由5 万が一の際に、真のセーフティネットは、「保険」です。
外国人労働者保険への加入こそが最高の事前対策であり事後対策です。
弁護士先生、社会保険労務士先生、行政書士先生は、事故などから会社を守るためのパートナーであり、アドバイザーです。
しかし、もし万が一の労災や事故が起きた際に、1億円の損害賠償請求がきた場合、なにも出来ないのです。
弁護士の先生ならば、示談交渉、減額交渉をしてくれるかもしれません。いくら交渉しても最高でも5000万円の減額ではないでしょうか?
また、実習生が不注意で近所のご老人を自転車事故に巻き込んでしまったとします。誰が減額交渉にいけるでしょうか?
地元で信頼される企業様にとっては、まさに大変な事態なのではないでしょうか?
そんな場面で1億円を支払ってくれるのは外国人保険だけなのです。しかも年間1万円のコストで。
これはこの業界を研究してようやく理解でき、たどり着いた結論なのです。
受け入れが完了して外国人技能実習生が入国した時点からは、保険こそが最高の事前対応であり、事後対応となります。
2.任意保険の外国人労働者保険にはどのようなものがあるのか
外国人労働者保険として、外国人技能実習生保険、外国人労働者保険、技能実習生保険というものが数社から発売されています。
ネーミングはばらつきがありますが、対象はほぼ外国人労働者になります。
外国人保険,外国人技能実習生総合保険,実習生保険,労働者保険,外国人研修生総合保険,技能実習生保険,外国人技能実習生保険,外国人労働者保険などなどの名前で販売されていますが、それぞれ特長がありつつも数が多いので混乱してしまいます。
これらの判断の基準は大きく分類しますと2点になります。
・技能実習生が母国を出て帰国するまでの講習期間を含む全期間をカバーしているので、在留資格の変更による保険加入漏れを防ぐことが出来る。
・公的保険でカバーできない期間(入国後講習期間など)は自己負担分が100%補償される
外国人労働者保険金が支払われる主な場合は下記です。
・傷害治療費用(本人が日常生活においてケガをした)
・疾病治療費用(本人が病気にかかってしまった)
・個人賠償責任(誤って他人にケガをさせた)
・救援車費用等(本人が危篤状態で家族を呼び寄せた)
外国人労働者保険金が支払われない主な場合は下記です。
- 妊娠、出産・流産およびこれらに起因する病気
- ・ケンカなどの闘争行為
- ・歯科疾病(ただしケガによる歯科治療を除きます。)
- ・業務上・通勤途上の傷病 (治療費用100%補償期間終了後)
ご注意いただきたいポイント
まだ未調査のものも含め、一部の保険は、海外旅行保険を転用しただけの構造のものが存在しているようです。
この保険の問題というのは、旅行中の行為を補償しているので、仕事中は補償対象にならないとのことです。
リバーストリップ型という分類にされるそうです。今後の調査項目に加えておきます。
外国人労働者保険を選択する際に注意すべき5つのチェックポイント
想定ケース:休日に自転車でご近所の老人を巻き込んで重篤な事故を起こしてしまった場合はどうするのか?
解決策:賠償金額1億円はないと企業を守ることはできないかと思います。
チェックポイント2.外国人労働者の替わりに「示談交渉」代行してくれるのか?
想定ケース:休日に自転車でご近所の老人を巻き込んで重篤な事故を起こしてしまった場合はどうするのか?
解決策:加入していなければ外国人労働者または、御社が対応することに?サービスに加入していれば保険会社が代行します。
そのような機能がついていれば担当者、役員の方たちも安心して地元対策に動けることになります。
チェックポイント3.外国人労働者の業務時間、休日の個人の時間のすべてをカバーしているのか?
想定ケース:保険のタイプによっては、旅行保険を転用したリバーストリップ型保険があります。このタイプの保険は業務中は補償対象外になるのでどうなるのか?
解決策:リバーストリップ型の保険は業務中が対象外なので、その機能を補うために労災上乗せ保険などでのカバーが必要になります。
外国人労働者の雇用元である企業を守るためには、24時間365日の管理責任がカバーできる保険の採用が理想です。
チェックポイント4.事故を起こした場合に日本語のみの対応で本当に大丈夫なのか?
想定ケース:日本語の不自由な外国人労働者が、保険会社に状況をうまく説明できない場合はどうするのか?
解決策:日本語での対応窓口しかない場合は、日本語の通訳を行うしかないのでとても不便です。 多言語対応している保険を選択しましょう。
チェックポイント5.外国人労働者本人が活用できる保険なのか?
想定ケース:事故や問題が起きた場合に、外国人労働者本人がコンタクトし説明し利用してくれるのか?
解決策:健康や医療について、メンタルヘルスについてなどの日本での不慣れな生活をサポートするための機能を充実させていることで、日常からのケアやサポートを受ける事が可能になっている保険も出てきています。このような形態であれば外国人労働者の社宅に掲示したり、日常から「体調管理の不安、メンタルヘルスの不安はここに連絡しましょう」と周知しておくことで人間関係上言いにくい事であっても事前に対策ができるのではないかと思います。
外国人労働者保険の保険サービスの保証内容と企業の信頼性について
現在私たちが加入できる代表的な外国人労働者保険は以下の2つです。
いずれも正規の保険代理店であり、大手損害保険会社を引受先としていることを確認したうえで掲載させていただいております。
・外国人技能実習生総合保険(JITCO保険) 取扱会社:(株)国際研修サービス
引受保険会社 三井住友海上火災保険株式会社 損害保険ジャパン日本興亜株式会社 東京海上日動火災保険株式会社 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
・外国人技能実習生総合保険 取扱会社:(株)セントラルインシュアランス
引受保険会社 ジェイアイ傷害火災保険株式会社
総評
外国人技能実習制度を受け入れることは技能実習生本人もさることながら、受け入れ側の不安も大きいものです。
任意保険を選ぶ際には保険料が安いことも大切ではありますが、実務に沿った補償額と技能実習生たちが健康に元気で実習に打ち込めるような環境づくりの一助になる付帯サービスの充実度も大切な要素になります。比較一覧表と貴社の実務の内容を照らし合わせて、貴社に合うしっかりとした内容の保険をお選びください。
今後については、更に調査研究を深めるために各社への訪問インタビューなどを予定しています。
外国人技能実習制度を活用するために必要な情報になります。 外国人技能実習制度~社会保険、労働保険の仕組み~のことならお気軽にご相談下さい。