なぜ今、外国人技能実習制度なのか?
外国人技能実習制度は問題を抱えながらも2010年から現在のカタチになっています。また、今後もその形を変えて進化してゆくでしょう。
制度の話をする前に押さえておくべき前提条件があります。
外国人技能実習制度の問題の是非や機能の有効性などを議論する前にぜひとも以下を読み進めて頂けますと幸いです。
日本経済における人手不足に労働市場の調査結果に基づいてご説明します。
有効求人倍率の急上昇
このデータは、厚生労働省の発表を元に作成されています。
2016年8月時点での厚労省の発表では、1.4倍を超えています。
バブル期並みになる可能性があると言っている専門家もいます。
平成22年を起点にした急激な有効求人倍率の上昇の主な要因としては、東日本大震災とオリンピック景気による建設ラッシュだとされています。
今後も上がり続けるのか?
現状が労働者にとって有利な状況が見て取れます。企業にとっては頭の痛い問題です。
人材紹介など、人材採用関連市場の市場規模場の拡大
人材採用関連市場と言えば約8000億円規模だったがですが、リーマンショックから5年間で2兆円を超える市場に急成長しました。
出典:「人材ビジネス市場に関する調査結果 2014」矢野総合研究所
特に大企業が、優秀な人材の争奪戦だけでなく、流出を止めるために様々な外部企業を使って施策を行っていることが原因と言われています。
求人市場は、過去にない空前の売り手市場の様相を呈してきています。
2016年現在では、20代、30代だけでなく40代でも転職すると給与が20%から30%アップするという状況になっているそうです。
今後は、すべての企業様で優良な人材に転職されてしまわないような自社内の施策も必要になってくるかと思います。
派遣業界の状況
労働者派遣の市場規模は、市場規模の拡大にあわせて増加してきたが、2008年に400万人規模までの拡大をしたが、現在は減少傾向にある。
理由は、派遣労働者の希望者の人数が減少していることにある。
登録者の人数が約39%の減少となっている状況である。
多くは、派遣労働者から正規雇用に移行したことが原因である。
また特に注目すべきは、派遣先件数の増加状況である。
登録者の増加といったいとなっている状況である。
業者に直接質問したところ、「登録者の希望、案件先の希望から特定の大手に集中してしまっている状況」との事であった。
また更に「派遣先の案件の受注残は、大手一社あたり数万人が派遣できない状況」となっているとの事であった。
この人手不足の売り手市場の状況でわざわざ派遣労働を選択するということは、かなりの好条件を選択できる状況となっているのようだ。
とりわけ中小企業や、3Kの派遣労働については、非常に難しい状況となっているようである。
そして、これは・・・。
もう中小企業や、3K企業には、派遣労働者も派遣会社の担当も来ないかも知れないということ意味しているように思えます。
この状況はいつまで続くのか?
経済財政諮問会議の調査会資料に見通しが出ています。
深刻な少子高齢化が、もはや国内の自助努力では解決不可能な領域に来てしまっていると読み取ることも出来ます。
日本人の数が増えるには、少子化問題の解決しかなく、解決したとしても労働可能な年齢になるまでには20年以上の時間を必要とします。
この表をよくご覧になってください。日本の未来が見えてきます。
ほぼ絶望的な状況に立っていることになります。
将来にわたって日本人労働者は枯渇しつづけ、減少しつづけることになります。
奇跡的に回復したとしても2110年の時点で現状と同等となっています。
もはや、労働力という視点だけでみますと国力の衰退、産業力の衰退は見えてしまったかのようです。
もちろん、現在のオリンピック景気、震災復興予算が永遠に継続するわけではないと思いますが。。。
しかし、多くの大企業では、将来10年間は、人材の争奪戦はとても激しいものになると予測しているそうです。
大企業の内部では、労働力調達計画にすでに暗雲が立ちこめているとされているそうです。
そこで、減少していく日本人の不透明な採用計画よりも、安定した労働力の代案として出てきているのが、外国人労働者の活用であり、問題もありますが、外国人技能実習制度の拡充なのです。
上記にあげた3つの現象を解決するためには、実習制度の拡充をもって対応するのが現時点では一番効果的で効率がよいというのが、日本の産業界、経済界が出した結論となっています。
もちろん、技能実習制度の戦略無き拡大には「問題だ!」との慎重論も多数出ているのですが、財界からの「人手不足!!」の声にかき消されてしまっている現状と言えます。
ある有識者は外国人労働者の活用とは、外国人技能実習制度のような仰々しいものではなくもっと単純でシンプルな短期就労ビザなどで実現させるべきであると主張しています。
実際に諸外国では、ワーキングホリデーなどの名目で単純労働を黙認している事実もございます。
★ワーキングホリデーとは、人生の休暇をかねたホームステイ留学で、低賃金で稼ぎながら現地語が学べるという体裁です。
現状の外国人技能実習制度は、「労働問題ばかりがフォーカスされてしまう構造」となってしまっているため、ワーキングホリデーなどを活用した戦略ももっと議論されるべきだと思われます。
しかし、現在の政府は新制度の構築よりも切迫した人材ニードに対応するためか、多くの議論をせずに技能実習制度の段階的な拡充を続けています。
その結果、「外国人技能実習制度」「技能実習制度」は悪だ!! 「技能実習」「研修生」「技能実習生」は奴隷だと不要な汚名を受け入れる状態となってしまっているように感じます。
あまり大きなひずみを生み出すような柔軟な法制度の対応は、日本国家の未来のあるべき姿を見えにくくしているように感じます。
その結果、今日、日本の経済界、産業界でおきている議論は、この新型の短期就労ビザの創設にあるべきなのですが、根本的に法律を組成していくには、議論の時間がかかるために現行で存在している外国人技能実習生の制度を拡充したり、変則的に変化させることで対応していくという状況になっています。
様々な議論があり、問題も抱えた外国人技能実習制度ですが、ただしく学び運用されれば、企業にとっても外国人の方にとっても素晴らしい制度になってきた歴史があります。
この素晴らしい制度を適正に運用して継続させていくことが、ひとつの道である事は実証されていますが、同時に日本産業界の大規模な人手不足問題の解決も大きなテーマとなっている状況です。
まとめ
制度の本来もつ使命と、ぬきさしならない日本の根幹を支える産業界における労働力不足問題の解決するための拡充。。。
問題の解決には、ゆがみを放置したままでは問題なのではないか?という慎重派の意見もうなずける部分があります。
皆様は、この労働力不足問題は、いつまで続くと思われるでしょうか?
あるインタビューによると、外国人技能実習生を導入する企業の約80%が、労働力不足は長期化するとの未来予測を持っているそうです。
日本人採用だけでは、労働力を計画的に調達できないという判断から外国人労働者の受け入れ導入の決断をし、その中の最大の選択史が外国人技能実習制度問題であったと見て取れます。
外国人労働者の雇用に慣れていく事は企業のサスティナビリティを考えるうえで、避けては通れない課題となっています。
そのための訓練を経験をいつどこで行っていくのでしょうか?
技能実習生制度の活用は、その厳しい運用ルールゆえに「日本人が誇りと思いやりをもって働く職場」をつくり、外国人の多様性をも受け入れて発展していく「社員教育」なのかもしれません。
外国人技能実習生が「安価で労働力を確保する手段」でなくなったことは、認識せざるを得ません。